ドジャースタジアムでの一枚
現地観戦にて(2025年8月・読者提供)
VOL.26 — 2026年8月25日–30日

親指を立てた男

34度の炎天下で30球を投げ終えた大谷翔平は、ただ、親指を立てただけだった。二刀流の"半分"が止まったこの夏、彼を見る目は少しずつ変わり始めている。

NLMVP争い・投手復帰・日米の報道格差

8月22日、ロサンゼルスは93華氏——摂氏にして34度に達していた。ダグアウト脇のブルペンで、大谷翔平は30球を投げ終え、集まった記者たちに向かって親指を立てた。それだけだった。AP通信はその日の出来事を、飾らない書き方で伝えている。暑さの数字、投げた球数、そして親指。感情の色は、ほとんどついていない。

7月3日を最後に、大谷はマウンドに立っていない。左ひざの張りが長引き、投手として休んでいる期間は、もう一ヶ月半になる。打者としての数字だけを見れば、打率.287出塁率.388長打率.546OPS+158——普通の年なら、リーグ屈指と言っていい成績だ。それでも今年は、少し様子が違うらしい。

ESPNは今季のナ・リーグMVP争いを、大谷とカブスのピート・クロウ゠アームストロングとの「熾烈な争い」と書いた。ただその書き方には、大谷にだけ、そっと条件がついている。「投げていれば、彼が本命だろう」——同僚の一人はそう語ったという。二刀流の片方が止まっている間は、なかなか満票をもらえない。7月中旬にはオッズ-1500という圧倒的な本命だった大谷は、8月末には+125まで後退し、クロウ゠アームストロングの-155に順位を譲った。FOX Sportsが伝える数字の推移は、感情を挟まず、ただ淡々と、この変化を記録していく。

「投げていれば、彼が本命だろう」

けれど、その変化を、そこまで深刻に受け止めていない人たちもいる。日本のスポーツ紙は、今も、ほぼ毎日のように大谷を一面に置き続けている——野球史研究家ロバート・ホワイティングは、そう指摘する。米国では、なかなか起こらない現象だという。記者たちが数字で線を引こうとする一方で、大衆の熱は、その線とは関係なく、変わらず高いところにとどまっている。

30球投げて、親指を立てた。その仕草に、特別な意味なんてなかったのかもしれない。それでも見る側は、そこに何かを読み取ろうとしてしまうものだ。復帰の日程は、まだ決まっていない。決まっているのは、この小さな仕草を、記者は淡々と記録し、ファンはそこにそっと希望を見出す、ということだけだ。

今週の試合結果 & 今シーズンの成績

今週の試合結果

8月25日〜29日、ブレーブス戦とタイガース戦。個人成績はESPNのボックススコアに基づく。

8/25 vs ブレーブス 3–4 L
大谷: 5打数1安打(三塁打) 三振1
8/26 vs ブレーブス 5–6 L
大谷: 5打数2安打(二塁打) 1得点 盗塁1 三振1
8/28 vs タイガース 2–1 W
大谷: 4打数0安打 四球1 三振2
8/29 vs タイガース 1–2 L
大谷: 4打数1安打 三振1
今シーズンの成績(打撃)
.283打率
30本塁打
80打点
.918OPS
146wRC+
今シーズンの成績(投球)
1.79防御率
95奪三振
0.95WHIP
8-2勝敗
投打合算WAR 6.9(打撃4.0+投球2.9)・詳細は成績ページ