7月3日のパドレス戦が、大谷翔平の今季最後の登板になった。6月に左ひざを痛め、7月には右上腕二頭筋に違和感が出た。オールスターは辞退し、9月8日には負傷者リストに入った。そこから10月15日の敗退まで、彼は打者としてだけ試合に出ていた。
10月21日、ドジャー・スタジアム。シーズンを締めくくる会見で、アンドリュー・フリードマン編成本部長はこの経過をひとことで言い表した。ひざが良くなったかと思えば、今度は上腕二頭筋のあたりに問題が出る。中日スポーツによれば、本部長はそれを「不運なモグラたたきのような状況」と呼んだ。
オフの手術については、はっきり否定した。手術は「選択肢に入っていない」(スポニチ)。大谷はチームドクターの診察を受け、いまは休んでいるという。ESPNのオールデン・ゴンザレス記者によれば、医師の処方は休養で、2027年に影響は出ない見込みだ。二刀流としてのトレーニングも続ける。本部長は "I fully expect him to pitch next year" と言った。
翌日の日本の見出しは、ほぼこの二点にそろった。手術回避と、来季も二刀流。前の週、大谷自身が手術について「今の段階では特に何も」と答えていたこともあって(スポニチ)、ひとつの懸念が片づいた、という書き方が多かった。
米国の記事は、同じ会見から別の話題を拾っている。MLB.comのソニア・チェン記者によれば、フリードマンは、大谷が自分の体の状態を常に正確に伝えていたわけではない、と認めた。勝ちたい、チームの力になりたいという思いがそうさせる。スター選手の多くに共通することだ、と本部長は続けた。
"The greatest players we've been around all do the exact same thing"
ESPNは、もう一歩踏み込んで書いている。来季は大谷にもっと率直に話してもらう必要がある。その計画に本人の意見がどこまで入るのかは、まだ分からない、と。前号で触れた「意思疎通にもっと良くできた部分があった」という本部長の言葉は、この会見で、来季の運用の話になった。
運用の中身は、まだ決まっていない。「開幕からいきなり投げるのか」。本部長は自分でそう問いかけた(MLB.com)。ESPNによれば、投手としての始動を遅らせる、休みの日を増やす、その両方、という選択肢が挙がっている。目標ははっきりしていて、10月に「本当に良い状態」で入ることだ。本部長は、前例のない状況で、参考にできる過去の例がないとも話した。
大谷のほうは、敗退の夜にすでに答えを出していた。完走できなかったシーズンには「自分の中で不満がある」。そして、続けていくために治療とトレーニングを見直す、と(デイリースポーツ)。
休む、と決まった冬には、期限がついている。大リーグの労使協定は、12月1日(米東部時間)で期限を迎える。前回の協定が切れた2021年12月、オーナー側は翌日からロックアウトに入り、それは99日間続いた。
日刊ゲンダイは10月23日、このロックアウトが大谷の二刀流復帰に影を落としかねない、と書いた。ロックアウトの間、選手は球団施設に入れず、球団のドクターや理学療法士、トレーナーとも連絡を取れない。けがの経過をいちばんよく知っている人たちに相談できなくなる、という指摘だ。記事によれば、交渉はサラリーキャップをめぐって行き詰まり、ロックアウトは避けられないという見方が強い。
同じ記事は、敗退の夜の大谷の言葉を引いている。「しっかりとオフシーズンを過ごしたい」。手術をしないということは、その「しっかり」の中身が、治療と休養と、少しずつ体を戻していく作業になるということだ。その作業を一緒にしてきた球団のスタッフと、12月から連絡が取れなくなるかもしれない。
同紙は25日にも続報を出し、登板の前後に休みを入れてDHを空ける、という起用の形を紹介した。これは匿名の米国特派員の見方として書かれたもので、球団の方針として発表されたものではない。来季の形は、まだ誰の口からも示されていない。
ひとつ叩けば、別のところが出てくる。今季の大谷の体は、そういう一年だった。手術はしない。だから冬のあいだにできることは、休むことと、その休み方を考えることになる。会見の日から期限の12月1日までは、6週間足らずしかない。